虫歯の成り立ち
〜そもそも虫歯はなぜできる〜
そこで虫歯の成り立ちについてまずお話しします。
まず歯はカルシウムの塊だと考えてください。
そして、歯の表面からカルシウムが溶け出して穴が開いてしまうのが虫歯です。なぜカルシウムが溶け出してしまうのでしょうか? お口の中に食べ物が入ってきます。特に、炭水化物(糖質)を咀嚼した瞬間から、お口の中は酸の海へと変わります。酸は物を溶かしてしまう性質があるのをご存知ですか? たとえば、塩酸を壁にかけると壁が溶けてしまいます。また、食べ物を飲み込むと胃酸という酸によって、食べ物は溶かされ消化されていきます。同じようにお口の中も酸で満たされると歯の表面のカルシウムが溶け出してしまうんです。
しかし、一定の時間が経つとお口の中は酸の海から中性の海へと戻ります。
お口は唾液に満たされており、唾液が酸を中性に戻してくれるのですが、この中性へ戻す力を唾液の緩衝能といいます。この唾液の中にもカルシウムは存在しています。お口の中が中性の海になると、歯は唾液の中からカルシウムを再吸収し、溶けてしまったカルシウムを補います。
こうして歯は、一日中何度も「カルシウムが溶ける」「再吸収する」を飲食の回数分だけ繰り返します。このカルシウムの収支バランスが崩れると、カルシウムが溶ける量が多くなり、赤字続きになると歯に穴が開き虫歯になってしまいます。この赤字続きの状態が虫歯病です。「虫歯を削ってつめる」「銀歯を被せる」といった行為は、本来の治療とは言えず、実は後始末です。なぜなら、カルシウムの収支バランスが赤字の状態、つまり、虫歯病が治ってない状態で、詰め物や被せ物をしても、短期間のうちに新しい虫歯が発生してしまい、年齢を重ねるごとに、どんどん歯がなくなってしまいます。逆にカルシウムの収支バランスが黒字の状態が続けば、虫歯に一生かからずにすみます。本当の予防歯科とはカルシウムの収支バランスを赤字から黒字に変えることです。
そして、この黒字の状態が虫歯病が治ったという状態です。
では、どうしたら黒字へと転換できるでしょうか?
ポイントは唾液を検査することです。
虫歯病は唾液検査で封じ込めろ
内科で血液を検査すると、おおよそ全身の健康状態を把握できます。同様に唾液の検査をすると、お口の中の健康状態が把握できます。
たとえば、血液の検査をして、血糖値や中性脂肪の数値が高かったりすると、運動や食事に対する指導が行われるでしょう。
同様に、唾液検査をすると、どのようにお口の中を管理すれば良いのかが見えてくるわけです。これは患者様ごとに、それぞれ異ります。虫歯にならない方法があるとしたら、まず歯科医院で唾液検査をしてもらうこと。そして、その検査結果にもとづいて、お家でのお口の管理の方法を、歯科衛生士さんに指導してもらうこと。それと並行して、歯科医院で定期クリーニングを行うこと。これらを実践して、常にカルシウムの収支バランスを黒字に保つように心がけてください。
ちなみに唾液検査とは、とても簡単な検査です。
5分間ガムを咬んでいただき、そこで分泌した唾液を試験管に取るだけです。唾液の分析は2週間ほどかかりますが、検査はとても簡単です。